人間ってけっこうかわいい?
徳羊舎の濵田です
『セイラ―教授の行動経済学入門』、前回(↓)の続きを学んでいきましょう
実験を繰り返してみる
ルールを復習しておきましょう
一人の手持ちは500円
出資は0~500円で自由
集まった出資金の2倍の額を参加者全員に等分
例)参加人数5人で全員が500円を出資した場合
500円×5人×2÷5人=1000円(最終的に各自が受け取るリターン)
これを実験で、同じメンバーで10回繰り返した学者がいました
1回目は前回のブログに書いた通り、平均すると500円の40~60%(200~300円)が出資されました
(正確には53%(265円)でした)
ところが2回目以降、拠出額は次第に下がり、6回目には16%まで下がりその後10回目まで横ばい
ただ乗りが得なことを学習した??
前回も書きましたが、出資額ゼロでただ乗りするのが一番リスクが少なく儲けられる方法です
例)1人は出資額0、他の4人は500円出資した場合
500円×4人×2÷5人=800(各自が受け取るリターン)
手持ち金は500円出資した三人が800円
出資しなかった人は500円残っているので1300円持つことになります
これに気づいた人たちが段々拠出を削り始めて16%まで下がったのではないかと、経済学者も考えました
明確な反証
けれども、10ラウンドの実験を2セット行った人が出たんです
被験者はこれを知らされていなくて、最初の10ラウンドが終わった後に、もう1セット10ラウンドやりますと告げられました
すろとあら不思議、2セット目の第1ラウンドの出資額はなぜか40~60%に戻っていました
もし、被験者がただ乗りが得だということを学習したから出資額が16パーセントまで下がったのだとすれば、2回目の1ラウンドから出資額は16%前後になるはずです
だってそうする方が得だと学習したはずなんですから
でもなぜかもう一度繰り返すと、また40~60%戻る…
なぜだ??
互酬主義が働く
何回もラウンドを重ねるので、被験者は他の被験者の振る舞いを観察するようになります
例えば拠出額0でまんまと800円をせしめた輩がいると、次のラウンドでは拠出額を抑える傾向が生まれます
逆に自分より多く拠出した人がいると、次のラウンドではより多く出資する傾向が出てくると
戦略的に考えると…
「長期的には」(10ラウンドとか20ラウンドとか)、「最初は協調的な手を打ち、その後は互酬主義で出資する」人が最も利益を出したことが実験で確かめられています
最初に出資額を大きくしておくことで、「他の出資者の大きな出資を誘発する」ことができるからです
他の参加者の出資額が大きくなれば当然自分へのリターンも大きくなりますもんね
ポイントは1回10ラウンドと「終わりが決まっている」ことです
つまり、最大の利益を出したいならば、後半のラウンドは出資額を大きく誘発する手を打つよりも、損害を出さないことが重要になってくる
例えば10ラウンド目で他の人の大きな出資を誘発するような打ち手って効果がほぼないですよね
だって、10ラウンドで終わりなんだから
では、被験者皆が「戦略的に出資」しているから、そう出資額は53%から16%まで下がっていくのか??
どうもそれだけではないようです
なぜなら、協調戦略を取ることが合理的でない場合でも、一定数協調路線を取り続ける人が観察されたから
やはり、合理性だけで人の経済活動は説明できない
実は戦略も特に考えずに、
「協調ありき」の人が結構多いんじゃないかと
協調ありきなんですが、ケチで欲張りの被験者もいますから、徐々に出資額を下げていかざるを得ない
確かなこと
現象として確認されたことは以下の通り
すなわち、人々は相手方が自分を利用していることに気付くまで協調し続ける傾向がある
さらにロバート・フランクという人の言葉を引用します
協調ありきの者は他人からの協調を上手く引き出すほか、他の協調者にやり取りしてみようという気を起こさせて、いい結果を得る。
そろばんはじいて、あるいは暗算で戦略を立てて、最初は協調戦略、その後は互酬主義という人も確かにいると思うんです
でも、特に戦略を考えずに協調路線を取る人が思いのほか多い
さらにそういう人が結局ただ乗りを決め込む人よりずっと多くの利益を得ている(笑)
こう見てみると、人間って結構かわいいところあるなあと思わされますね
さて、次回はいよいよ、
「なぜ人々は戦略なしでもまず協調路線を取るのか」という問題に踏み込んでいきたいと思います
この辺からがたぶん行動経済学の真骨頂なんじゃないかな??
それではまた!!